
時は2009年。私は、ドイツで音楽大学の学生をしていました。
ある1月の寒い冬の日、突如として日本人の知人に誘われ、ハンブルクでブンデスリーガの練習試合を観戦したあとドイツ最大の歓楽街・レーパーバーンに足を踏み入れるという、なかなか珍しい経験をすることとなったのです。
試合には、あの日本人選手たちも出場していました。



ドイツ留学中のある一時期、私は無料のブログサービスを利用してブログを書いていました。それ自体はもう消してしまったのですが、文面のコピーを手元に残しています。
ここに、当時書いたブログの文章をそのまま載せたいと思います。


ハンブルクでサッカー観戦そして、 レーパーバーン(2009年1月投稿のブログ記事)
最近知り合ったお姉さんとその友人の方々(全員日本人)と、サッカー観戦をしてきました。
FCザンクトパウリ VS VfLヴォルフスブルク
の、練習試合。
ここは、天下のザンクトパウリのホームスタジアム。
もう、特に、男どもの熱狂ぶりがすごいです。
ドイツのサッカー応援の盛り上がり具合は、レベルが違う。
記憶に新しいのは、去年のヨーロッパ選手権。
列車の中でテンション高いアナウンスが流れだしたと思ったら、
今、何対何でドイツが勝ってるぜ!!
みたいな実況なんだもん。
いい国だなって思った。
地下鉄とバスの中でも同じようなのを聞いたなぁ。
ドイツが得点をあげれば、瞬時にどっかで花火が上がる。
ドイツが勝てば、ドイツ国旗をつけた自家用車たちがクラクション鳴らしまくりながら爆走する。
その、愛国心と喜びを素直かつストレートに爆発させる&国民で分かち合う感じ…
うん、やっぱ、いい国だ。笑
結局、この日スタジアムの観客の95%くらいがサポートしてたと思われるザンクト・パウリは、2-0で敗北。
でも、観客は温かかったなあ。
たとえゴールが決まらなくても、ザンクト・パウリ側がシュートを打つたび、沸き起こる大きな拍手。
響き渡るは、気合いの入りまくったいかつい声援と地鳴りのような盛大な足踏み。
もともと、今回の相手のヴォルフスブルクはブンデスリーガ1部で、ザンクト・パウリは2部なので、格上の相手と戦ったということになる。
ザンクトパウリ、昇格しないかな。
そしたらアホのように盛り上がるだろうな。
ヴォルフスブルクのメンバーでは、
大久保嘉人選手と長谷部誠選手が出ていた!!
大久保選手は、この1月からヴォルフスブルクにいるそうです。
ザンクトパウリのホームスタジアムに来たので、ザンクトパウリを応援しようと思ったけど、日本人選手のいるチームも応援したくなったあたしは不届き者。
結局、どっちも応援してました。。
ああ楽しかった。
スポーツ観戦は最高だね♡
◇
その後、同行者の友達のドイツ人が合流し、皆で彼の行きつけのバーへ。
薄暗いというか、もろに暗くてさびれた感じで、怖いとこかと思ったけど、普通のバーでした。
ビールを飲みながら、名前のわからんゲームをしました。
バーでドイツ人の彼と別れてから、一人が「面白い店があるよ」というので、
…なんかみんなが気持ち悪い笑い方をするので、ああ、ヤバい店なんだろうなと思ったら、
ヤバい店でした。
実に楽しかったです。
どういう店かというと、
まあ、鞭とか売ってる店です。
ちなみに、鞭は、かなり硬かったです。
あまりにもそんなグッズとかDVDとか衣装とか色々、
もうあんまりにもぴしっと整然とディスプレイされていて、
天井なんてすごい高くて店内はピカピカで、
清潔感たっぷりというか、
怪しい空気は微塵も漂ってないのです。
電灯は白く煌煌と輝いて、
とにかく広いし明るいしで、
女の人たちもごく普通にあっけらかんと品物を物色してました。
そして、お客は皆、けっこう真剣な面持ちでした。
「女の子も平気で入ってきて見るんですね?」
と、傍らで革製のなんかを見てる同行者に聞くと、
「ああ、ここは博物館みたいなものだからね」
だそうだ。
博物館ね。すごい納得。
卑猥な店を通り越して、もはや、健全なる社会勉強の場といっても過言ではない。
それは過言か。
しかし、あそこまで店内が分かりやすく綺麗にされているのを見ると、商売人の鑑、という言葉すら頭に浮かぶ。
ちなみにこのお店がある場所は、
ドイツ最大級の歓楽街、レーパーバーンです。
有名な場所だと思います。
通りに軒を連ねるのは、歌舞伎町系のお店です。
女の人!!一人で行ってはいけませんから、絶対に。
かといって、女性二人とかもちょっと危険かも。
純な人も行かないほうがいいのかなぁ。
観光地としてはすごく面白いところだと思うので、
大人の方はぜひ。
怪しい「博物館」を出た後は、皆で韓国料理のお店へ移動。
キムチが六種類くらい出てきて嬉しかったな。
チヂミが死ぬほどおいしかったです。
初めて本物を食べた気がしました。
野菜がたっぷり入った真っ赤な辛い鍋にも大満足。
体にいいもの食べたなって感じです。
三週間ぶりにワインも飲んじゃいました。
◇
やっぱり、日本人と一緒にいると、心からほっとします。
こっちに来てみて分かったけど、
日本人と知り合うと、瞬時に、団結力じゃなくて何て言えばいいのやら…
一体感じゃなくて…
助け合いの精神じゃなくて…
うまく言えませんが、そういう感情が発生します、間違いなく。
あたしも時々は心細くなるし、他の日本の方々も、多分、たまに心細くなってるのだろうと思います。
たとえ、どんなにこっちで立派に留学or仕事を遂げているとしても。
はっきり言えるのは、日本語で会話して笑い合うだけで、安心できるってことです♡
(2009年1月、当時のブログへ投稿)
その後の話など



これが、私がブンデスリーガの練習試合を観戦し、レーパーバーンに行った日の体験談です。
ブログ本文中に出てくる博物館然としたアダルトショップとは、このお店です。→Boutique Bizarre
「世界で最も罪深い1マイル」と言われるレーパーバーンに、まさか自分が行くとは思ってもみなかったので、生きていると何が起こるか分からないものですね。
このレーパーバーンが位置するのが、ハンブルクのザンクトパウリ地区。
FCザンクトパウリの本拠地です。



ちなみに、ザンクトパウリのオフィシャルグッズは、かわいいものが多いですよ!スタジアムのショップでは目移りしちゃって困りました。
相手チームだったVfLヴォルフスブルクに在籍していた大久保嘉人選手と長谷部誠選手のことは、通っていた音楽大学の日本人仲間の間でよく話題にのぼっていましたし、この2年後に長谷部誠選手が出した大ベストセラー「心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 」も、一時帰国中に購入するなどして読んでいる人が多かったです。
同じ日本人であるサッカー選手がドイツの地で生活し活躍している、ということが、大きな励みになっていたように感じます。
FCザンクトパウリは、この翌年、ブンデスリーガ1部に復帰。しかし最下位となり、1シーズンで2部に降格となってしまいます。
それから13年経った、2024年。
何と、ザンクトパウリは、再び1部に返り咲いていました。
このニュースを知った時、あの熱狂的なサポーターたちの野太い大声援が、脳裏に甦りました。
長くチームが続いていれば、いろいろなことがあるよね、人生もそうかもしれない、と、不思議と勇気をもらえた気がしたのでした。



