
先月(2025年9月)、ショート映画のサブスク SAMANSAで観た作品の中で、特に心に残った5作品を挙げていきます!


『愛のため』


ある社会学者が、25歳から45歳の異性愛者の女性に、性についての聞き取り調査をした様子をアニメーションで伝えるドキュメンタリー。
何気なく街を歩いていると目に入ってくる広告の一文。
それらが原因で、瞬間だけ、心がヒリっと痛むようなこと、ありませんか。
私はあります。
なんてことを、改めて思わされる始まり方でした。
サムネイルと紹介文を目にしたときは、(アニメーションなのにドキュメンタリー?)と不思議に思ったのですが、実際に鑑賞してみて、なるほど、こういった手法があるのか、素晴らしいな、と感じました。
児童書の挿絵のような、シンプルであたたかな雰囲気の画が動いている様は、本当にアーティスティック。
性についての話は、ここ日本ではなかなかオープンにできるものではないように思いますが、こちらの映画が制作されたフランスではどうでしょう、きっと、日本よりはずっと自由に話せるのではないでしょうか。
この『愛のため』はアニメーションなので、インタビューをする側も受け手も、当然の如くアニメーションで描かれています。つまり、顔が見えません。
だからこそ、かなり突っ込んだ話題を展開させてくれていますし、軽い絵のタッチのおかげで、「何がとは指摘できないんだけど、つらい」テーマでさえ、スルスルと視聴者に観せてしまうことができるのでしょう。
スルスルと観てしまったあとで、「じゃあ、一体何が問題だったんだろう。それについて、自分は、本当のところはどう思っているんだろう」と、ぐるぐると考えさせられるのです。
観て感じて考える、そしてドツボにはまる、そんな映画でした。
『リトル・シークレット』
少年は、母親との約束を破ったことを隠すために、嘘をついた。それだけだったはずなのに、嘘に嘘を重ねなければならなくなり、騒ぎは恐ろしいスピードで大きくなっていく…。
どんな小さな嘘でもつくものではない、と決意せざるを得なくなる、究極の【嘘をつく気が失せる】作品、それがこの『リトル・シークレット』。
誰しも、思い出すと心がチクチク痛んでしまうような嘘をついたことがあるのではないかと思います。
主人公の少年も、母親に対して嘘をつきます。他でもない、親に対して、というのがポイント。
自分のことを誰よりも愛してくれる人に嘘をつくということが、例え後先考えずにしてしまったことだとは言え、どれほど相手を苦しめるか、どれほど自分も苦しむことになるか、視聴者はじわじわと見せつけられることになるのです。
後悔してもしきれない。戻せるなら時を戻したい。自分を責めては絶望に陥るその心情が痛いほど伝わってきます。
が、そもそもの始まりは、主人公の取った馬鹿馬鹿しいとしか言いようのない行動なのでした。
人生を一変させてしまうのは、案外、そういうくだらないことやくだらないものなんだ、なんて、鑑賞後は人生に対して妙にクールな考え方をしてしまいました。
余談ですが、主人公の母親のファッションがめちゃめちゃ好きです。素敵。
この映画、観るのはつらいけど、建物、ファッション、色彩感などは何度も見たくなります。
チェコの映像作品ってこういう感じなのかな、と、とても楽しめました。
『スリムになる4つの簡単な方法』
痩せるにはどうすれば良いか。まず、ビールを飲まないこと。食事制限をすること。そして、最も手っ取り早いのは…。
失恋。辛いですよね。そりゃもう簡単に痩せられますよね。
この作品、タイトルが『スリムになる4つの簡単な方法』ですが、痩せてハイ終わり、という話じゃありません、勿論。
けれども、主人公の男性、痩せたら無茶苦茶イケメンになりますから!!びっくりです。そこも見どころですよ!そして、とにかく、観ると生きるエネルギーが湧いてくる映画なので、心からおすすめです。
生きていれば、思いもよらない色々なことが身に降りかかってきますよね。何となく流されてしまうこともあるし、自分、何でこっちの方向に来た?って思ってしまうこともしばしばです。
起こったことは変えられないし、自分以外の周りの人間を思い通りに動かすことだって不可能。
決められるのは、自分がいかに行動するか、ただそれだけ。
でも、誰しも、たとえどんな苦しい道のりを歩む時期があったとしても、いつか自分の軌跡をふと振り返って、辛かった時も良くやったな、って思う日が来るんじゃないかな。人も環境も日々変化していくし、時は流れていくから。
私は、この映画を観て元気を貰えたし、その時その時でいろんな決断をしてきた過去の自分を労ってあげたくなったのでした。
『じゃんけん』
子供とじゃんけんをして遊ぶ青年。無邪気な光景だが、そこは紛争の最前線にある仮設の診療所で、今にも敵が迫ってこようとしていた。ウクライナ侵攻のさ中に起きた実話に基づく物語。
戦争に関連する書籍を読んだり、映像作品を観たり、ということを毎年するように自分に課しています。
戦争を知らない人間が、未来のためにできることは、戦争について知ろうとすることだと考えているからです。
主人公のイワンの父親は医師で、多数の患者たちを抱えていますが、仮設診療所の環境は劣悪。
皆の命を繋ぐべく、イワンは死に物狂いで奔走することになります。
無邪気な表情をしたかと思えば、疲れ切った老人のような横顔を見せる彼。ここで描かれているような状況では、ひたすらに神経がすり減らされていき、そうならざるを得ないのだ、ということを思い知らされました。主人公の年齢が明かされるところでは大きなショックを受けました。
物語が子供とじゃんけんをする無垢なシーンから始まるだけに、その後のつらい展開が胸に突き刺さります。
私がイワンに対して一番強く思ったことは、(支えたい)ということでした。本当なら、人はたくさんの人から支えられて、自分も誰かのことを支えて、そうやって生きていくはずなのに。
紛争の最前線で、たった一人で【ある決断】をしなければならなかった青年。
こんな思いは誰だって味わうべきではないのです。
『サーモン』
一流レストランのキッチンで働くこととなったオーガスト。シェフから厳しい言葉を浴びせられ、理不尽な扱いを受けながらも仕事に集中していたが、実は、重大なミスを犯してしまったことを隠していたのだった。
料理人の世界って、どんなだろう。そんな興味がきっかけで鑑賞した作品でしたが、
いや、理不尽すぎるでしょ。
何なんですかコレ、一流レストランのシェフだからと言って、料理人たちにこんな酷い言葉を浴びせてもいいんですか。と、心の中は、シェフに対して非難轟轟でした。
ただのシェフじゃない、一流レストランのシェフなのだから、神のような腕前なのでしょう。
でも、ただただ性格が悪い。腕は神なのに。
世の中は、何と不条理で、一筋縄には行かないのだろう。
そう、私がこの作品を観てまず感じたのは、それでした。主人公は、若手であるにも関わらず、おそらくかなりの実力者です。しかし、物語の冒頭で犯してしまった、どう見ても小さいとは言えないミスを、隠し通そうとするのです。全く正直でない行為ですし、シェフは勿論のこと、同僚たちにも大きな迷惑のかかる行為です。
レストランのキッチンという時間に追われる現場で、邪悪さも含め様々な面を持ち合わせたその道のプロたちが、一体どのように動いていくのか。
ハラハラしながらも、感情移入して、とても楽しむことができました。
おわりに
先月観た作品の、TOP5を挙げさせていただきました。
制作国は以下の通りでした。
『愛のため』 フランス
『リトル・シークレット』 チェコ
『スリムになる4つの簡単な方法』 アメリカ
『じゃんけん』 イギリス
『サーモン』 デンマーク
『愛のため』は、【R15+:性表現】、『じゃんけん』は【R15+:暴力】ということで、今回はR-15指定の作品が二つありました。
しかし、単に刺激が強い、というのとは異なり、とても深く考えさせられる作品でした。
それはこの二作品に限らず、五つ全ての作品に対しても言えることです。
そしてR-15指定を含むとは言え、今回は、若い方々にこそ観てもらいたいな、と思える作品が揃いました。
短編映画を鑑賞したほんの数分、あるいは数十分で、これまで知り得なかった世界をのぞくことができるなんて、すごいことではないでしょうか。
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