
先月(2025年12月)、ショート映画のサブスク SAMANSAで観た作品の中で、特に心に残った5作品を挙げていきます!


セーブ・ミー
高齢者施設で働く男は、寝たきりの入居者たちが眠る部屋で、夜な夜な酒を飲んで酔い潰れていた。ある日、彼の身体のいたるところに文字が浮き出てくるようになる。
若い頃のある一時期、私は韓国映画を手当たり次第、貪るように観ていました。今でも多少なら韓国語の単語を理解できますし、ハングルが読めます。それほどのめり込んでいました。
この短編作品の中には、(あ、韓国映画だな)と感じるポイントがいくつもありました。
ストーリーの衝撃度、音楽の雰囲気、人物の表情、などなど……。
観終わったあとは、心にモヤモヤとした重たいものが残りました。少し時間が経った今でさえ、断片的に思い出すだけでも暗澹たる思いがしてくるほどです。しかし、反面、少し癒されている自分がいたのも事実でした。
過去に出会った韓国映画でも然り、見たくないから目を背けていた事柄、いわゆるタブーとされるものなどが描かれています。でも、制作者側の愛情のこもった目線が感じられるのです。
だから、鑑賞後に、観て良かった、出会えて良かったな、と充実した気持ちになるのだと思いました。
印
その客は、処刑人のデザインのタトゥーを要望した。そして、施術中にタトゥーアーティストへ対して次々に質問を重ねていく。次第に明るみになるタトゥーアーティストの過去とは。
【R15+:暴力、恐怖】となっています。とっても残酷でコワいので、心して観てください。
でも、めちゃくちゃ不謹慎なことを言いましょう。この映画、かっこいいです。
例えば、作品タイトル(原題 “Marked”)の出し方。ここで来たか!凄い!と痺れました。
そして、タトゥースタジオの客である男性。イケオジとは、彼のような人のことを言うんだろうな……。スマートで渋いです。演じているのは、ジュリア・ロバーツのお兄さん、エリック・ロバーツです。
ストーリーは、謎だらけの状況から進んでいきます。前述の彼は存在感あるフレームの眼鏡をかけており、それがミステリアスな雰囲気を倍増させているように感じます。
ふと、金原ひとみ著『蛇にピアス』が思い出されました。物語に登場するタトゥースタジオの描写から滲み出るダークさという一点に於いて、この作品のそれと大いに共通するものを感じたからです。
私は、タトゥーを入れておらず、タトゥースタジオに足を踏み入れたこともありません。
ただ、ドイツで生活していた時に、あらゆる場所でタトゥースタジオを見かけ、他の種類のショップとなんら変わりのない、明るく入りやすそうなところだなぁという印象を持っていました。
それがどうだろう、『蛇にピアス』にしても、『印』にしても、出てくるのはまるで真逆なイメージなのです。
何か不穏なことが起こるとしか予測できない空気の中、この作品の中でも、果たしてそれは起こってしまうのです。
フィクションで良かった、ダークではない現実世界に戻って来られて、本当に良かった。
観終わったあと、体の力が抜けて、少しホッとしました。
ライドインプログレス
4年間付き合った男にフラれたサラとその親友メーガンは、男が配車したウーバーをハイジャック!超ハイテンションなラスベガスへの旅?が始まる。
ハイジャックとは、乗り物を乗っ取ることです。その行き先はハイジャック犯によって決定されます。
ウーバーとは、配車サービスです。スマホアプリで依頼をすると、近くにいるドライバーとマッチングし、配車されます。
では、ウーバーで配車された車をハイジャックすると、どうなるか。配車依頼をした人物が乗車料金を負担することになります。
この作品で主人公らは、元彼が手配したウーバーの車をハイジャックし、行き先としてラスベガスを指定しました。その乗車料金ときたら、いくらになるのでしょうか、きっと恐ろしい金額でしょうね。なかなかえぐいことをしますね。
でも、そんなことをされてもしょうがない元彼なのです。長年付き合った女性に対して、非道いとしか言いようのない台詞の数々を投げつけて、関係を終わらせたのですから。
振られたサラと、その親友メーガンの会話は、常に笑わせてくれます。
序盤の
「クリスにフラれたの」
「あいつ殺してやる」
のやりとりからして、もう最高。
〈新しい友達〉となるウーバーの運転手もなかなかの強者で、ハイジャックされたとは思えないほど乗り気。目的地目指して、かっ飛ばしてくれます。
「大丈夫 ”お客様を目的地に届ける” これが運転手の仕事だからね」と。
どんなスカッと系の話にも勝るくらいスカッとする映画で、満足度150%でした。
女同士の友情、やっぱりいいね!って思うけど、個人的に一番仲良くなれそうなのは……、ハイジャックされたウーバーの運転手かな。なんかオタク気質がありそうで、話せば話すほどディープな話が出てきて楽しそうだから。
利用規約の男
新人編集者は、締切を目前にして缶詰状態になっている作家のもとを訪れる。長年ファンだった憧れの作家の仕事ぶりを見られることに嬉しさを隠しきれない彼女だったが、その執筆内容を知り、愕然とするのだった。
利用規約。
何かと目にしますよね。でも、きっと、文字通り目にするだけ。視界の中に入るのみなのです。
けれども私は、そんな利用規約をきちんと読もうとしたことが一度だけありました。
なぜか。昔、ドイツに住んでいた頃、いろんなことがあったからです。
いろんなことについては、ここでは割愛しますが、とにかく自分がしっかりしていないと思ってもみないトラブルに巻き込まれる、頼りにできるのは自分自身だけなのだ、と4年間の現地生活で学んだのでした。
それで、帰国後にスマホの乗り換え手続きをした際に、利用規約を全部読もうと試みたのです。
ちゃんと読まないことには騙されて痛い目に遭うかもしれない、いや、遭わない可能性のほうが高いが、もし万が一遭ったらそれは自分の責任なのだから……、などと考えていたように思います。
今になって思い返すと、だいぶおかしい人ですね。まあ、でも、4年に渡るヨーロッパでの生活は、そんなふうに人を変えてしまうチカラがあるのです。
いちどに全部は読めないので、利用規約のページを全てスクショしました。画面の上から下まで、文字がびっしり。スクショ画像にして、6枚分だったでしょうか。
で、果たしてそれを読めたかというと、読めませんでした。
ああ読めなかったとも。そう、1行もな。
利用規約には、そんな恐るべき威力があります。読もう読もうと意気込んでいても、目をそちらへ遣るだけで、目が、脳が、魂が、それを読むことを拒絶するのです。
利用規約を執筆する、という作業を行なっているのは、一体誰なのでしょうか。
この作品を鑑賞して、利用規約が生まれる背景に思いを馳せ、なんだかちょっと切なくなったことも事実。
最初のうちは、(…コント?)と思っていましたが、ストーリーが進むにつれ、どんどん、どんどん、その世界に丸め込まれていくような不思議な感覚を覚え、エンドロールでは、(こんなにこだわり抜いたエンドロールって観たことなかったかも!)と興奮してしまいました。
『利用規約の男』は、ユニークで素晴らしい作品です。
それでもやっぱり、利用規約は、これからも1行も読めないと思います。
ザ・ギフト
少年は、貯金してきたお金を持って、母親と一緒に誕生日にずっと欲しかった自転車を買いに来た。しかし、「あれが欲しい」と彼が指差した別の物を見て、母親は大激怒。そこで、店主が少年に優しく声を掛ける。
音楽大学に通っていた頃、毎週楽しみにしていたある授業の中でのできごとでした。どういう経緯でそうなったかは思い出すことができないのですが、先生が「あの人は本当に色気がある」と言ったのです。
先生は、当時、二十歳かそこらだった私の親と同じくらいの年齢と思われました。涼やかで、知的で、いつも微笑んでいて、穏やかで、理路整然と話をしてくれました。その先生の口から、突然、色気というワードが飛び出してきたものだから、ある種の衝撃を受けたのです。
と同時に、世界的に有名な「あの人」のことを、映像などもほとんど目にしたことがなかったにも関わらず、私は崇めるべき人物として記憶するようになったのでした。
この映画は、実話に基づいています。そう、「あの人」の子供時代のお話です。
因みに、某サイトで、「ネタバレになってしまっている邦題を、SAMANSAではネタバレしないように『ザ・ギフト』としてくれていてグッジョブ」的なコメントがありました。首がちぎれるほど頷きたい。本当に、その通りだと思います。
他の媒体ではタイトルを目にするだけで、「あの人」が一体誰なのかが、モロに分かってしまうんです。初見がSAMANSAで良かったと心から思いますし、SAMANSAバージョンの『ザ・ギフト』というタイトルで広まっていけばいいのに、と感じました。
鑑賞後、「あの人」の映像をYouTubeで視聴しました。
先生、やはり、この方の色気はすごいですね。
聴いていると癒されてなんだか安心してしまい、ずっと身を委ねていたくなるような、甘く深い低音の声。くるくると変化してゆく、時にやぶれかぶれ、時にざっくばらんにも見える、その表情や動き。釘付けになってしまいました。
私が生まれたのは、かの人が亡くなった何年も後なので、当時の全世界の熱狂ぶりは、知る由もありません。
でも、この偉大な人物がいついつまでも人々を魅了し続けることは、確固たる事実でしょう。
そんな人物の子供時代の、【運命を変えた】できごとを描いたこの映画。
様々な経験をしてきた大人の実感こもった真摯な語りかけが子供の心に響いた、という素敵な物語でもあります。
子供にとって、親は勿論ですが、親以外の大人がまっすぐに向き合ってくれることがどれほど大切であるか。ハッとさせられました。
観れば、胸が熱くなること必至です。
おわりに
先月観た作品の、TOP5を挙げさせていただきました。
制作国は以下の通りでした。
『セーブ・ミー』 韓国
『印』 アメリカ
『ライドインプログレス』 アメリカ
『利用規約の男』 日本
『ザ・ギフト』 イギリス
実は、2025年から2026年に年が改まる直前まで、短編映画を観ていました。
昨年は、短編映画が生活の一部となった、自分にとって無くてはならない存在となった一年だったな、と感じます。
大好きになった作品、強く印象に残った作品だけでも、2025年だけで47作品あったのですから……。
今年も、たくさんのすばらしい映画に出会える予感しかないです。楽しみ楽しみ。










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