
先月(2025年7月)、ショート映画のサブスク SAMANSAで観た作品の中で、特に心に残った5作品を挙げていきます!
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『Ding Dong Ditch』
少年が公園の砂の上に書かれた4つの文字を目にしたことで、二つの人生の一部分が交差し出す。顔を合わせたこともない少年と少女の、メッセージのみのやりとりが始まった。
タイトルの Ding Dong Ditch は、英語のスラングで「ピンポンダッシュ」を意味します。これを分かっておいた上で観るのがよいと思いました。日本語にしても英語にしても響きがリズミカルで小気味よく、軽〜い感じを醸し出している言葉ですが、絶対やっちゃダメな行為ですね。
子供の頃、長期休みなどに家族で遠出する際に新幹線に乗れるのが、いつも楽しみでした。
窓の外を見ては、この景色いいな、ここでの生活ってどんな感じかな、小学校にはどうやって通うんだろう、買い物はどういうお店に行くんだろう、なんて、訪ねることのないであろう知らない街に思いを巡らせてはうっとりしていました。あんなにゆったりとした気持ちで旅のひとときを過ごすことは二度とないのかもしれない、今となってはそう思います。
この作品は、当時の自分が新幹線の窓の向こう側にみた「知らない街」の日常をのぞいた気分にさせてくれました。
少年が画面に映っているときは、〈行ったことはないけど、分かる、こういう場所〉と感じ、少女が映っているときは、〈どうやっても馴染めない、よそよそしい場所ってあるんだよね〉と感じ…。
少年のパートと少女のパートは、何だかとても対照的です。箸が転んでもおかしい、と言わんばかりの明るい「陽」の気を纏った少年。対して、あまりにもいたましい環境で日々を送っている少女。この年頃の子にこんな辛いことがあるなんて、と思わずにはいられない場面もありました。
少年と少女の、作中での最後のやりとりとなった砂上のメッセージは、私には読み取れませんでした。
あれは何て書いてあったんだろう。観る人に委ねる、ということなのかもしれません。
うまいこと感想をまとめるなら、心に火が点るような、そんな映画。でも、全然それだけじゃないのです。混沌とした人生が、ごちゃまぜな感情が、11分間に閉じ込められた、切なくてきれいな物語でした。
『マーヴ』
待ち合わせをしていたのに約束をすっぽかされてしまった傷心の男性の元に、祖母から電話がかかってくる。彼は、祖母とそのボーイフレンドとディナーをすることになるのだが……。
劇中に流れるジャズと、エンドロールで流れる歌が本当に心地よかったです。
マックスウェルハウスというコーヒーは、この作品を観て初めて知りました。飲んでみたいな。
主人公の男性、私はすごく素敵だと思うんですよ。佇まいとか普通にかっこいいな、と。
その上、おばあちゃんに優しいし、笑顔がかわいい。好きです。だけど、「彼ってハゲてて太ってたの」などと、非道い言われようです。
おばあちゃんは、バッチバチにメイクしていて、キラッキラの巻き髪とドレスで、俗に言う〈おばあちゃん〉のイメージからは対極のところにいるような人。
じっと目を見つめながら話すので、何もかも見透かされてしまいそう、と思わせつつ、少女のように迷いや恥じらいを見せるところも魅力的です。
そして、その彼氏のマーヴ。
言ってることとか、結構最悪です。チョイスする話題が下品。その下品な話を、初対面の人間にぶちかましてくるとこも最悪です。
でも、最悪なこと言ってるこの彼が、主人公の心を動かすことになるのです。
おばあちゃんとラブラブなマーヴ、色気はすごいです、めっちゃ振り撒いてます。だから、まだまだシャキッとして元気なのだろうと疑いもなく思っていたら、違うんですよね、歩くとヨボヨボなんです。それで一気に、主人公に対して語っていたことが重みを増したような気がしました。ちなみに、下品な話のことではありません。他にも大事なこと、色々と語っています。
自分がもっと歳を取った時に再び観たらどういう風に感じるのだろうか、また違った感想を抱くのだろうか、と楽しみに思える作品でもありました。
『シスター』
夜の闇の中を走り続ける車の運転席には男性、隣には電話をしている女性が。しかし、女性の声色は不安を帯びている。彼女がかけているのは、緊急通報センターだった。緊迫した中で、状況が少しずつ明らかになっていく。
通報センターのオペレーターの彼女のファッションが印象的でした。仕事中のさりげないおしゃれって感じで。気に入っているアクセサリーや腕時計を身につけていると、ふとした時に元気が出ますよね。
緊張感あふれるドラマだったので、そういった細かい部分に目を留めて、心を落ち着かせたかったというのもあります。
苦しくなってくるくらい、暗く、閉塞感のあるシーンが続き、お願い頑張ってくれ、この状況を打破してくれ、と祈るような気持ちで観入っていました。ある人物が激昂する場面など、本当に恐ろしくて恐ろしくて…。
鑑賞後にSAMANSAによる解説を読んだのですが、ショート映画ならではの表現がこの作品に詰まっている、といったことが記述されていて、なるほどな、と思いました。
観る人に「手に汗」握らせること必至な、この作品。
緊急通報センターに通報をする人々が同じ世界に存在していること、そして、通報の電話は鳴り止まないことを、改めて認識させられます。
通報センターでの業務に従事する人々の精神的な疲弊は、どれだけのものなのでしょう。彼らが救っている命の数々を思うと、ただひたすら賞賛の念が込み上げてくるのでした。
『ロゴラマ』
人も、動物も、建物も、全てが企業ロゴな世界。指名手配犯が逃走中との情報が入り、平和だった街が、俄かに物々しくなってゆく。
アカデミー短編アニメ賞受賞作品。
次々と企業ロゴが目に飛び込んできて、ストーリーが全然頭に入ってきません。
でもいいんです、楽しいから。鑑賞3回目で、やっと話の流れがちょっと掴めたくらいです。
それにしても、ドナルドが鬼畜すぎやしませんか。ひどい描かれようです。
3000種以上登場するとされているロゴの中で、特に、すごい!って思ったのが、evian。なんだか、とってもキレーな感じで、風景になっちゃってました。
これ、当然の如く観る人によってインパクトを受けるロゴって違うんだろうな。
終わり方は壮大すぎて、笑えるやら感動するやら。最初から最後まで、画面の隅から隅まで楽しいアニメーション映画でした。
『目はこっち』
モデルとして忙しい日々を送る女性が、ある男性と一夜を過ごす。恋人をつくる気がないように見受けられた彼女だったが、あくる日、彼と行動を共にするうちに、その心境に変化が芽生えていく。
目はこっち = my eyes are up hereという言い回しを知らなかったので、鑑賞後に色々と調べてみました。登場人物たちがどのような意味でこの言葉を発したのか想像を巡らせたり、彼らの前日譚までもが思い浮かんできたり、と、楽しめたので、調べて良かったです。
海外の映画を観ていると、しばしばこんな風に気になる言葉に出会うことがあり、意味を理解すると作品への理解度もぐっと深まる気がします。いろんな言語に興味がある私にとって、こうしたことも映画鑑賞の愉しみの一つとなっています。
主人公の女性も、相手の男性も、本当にチャーミングです。
男性のほうは、けれども、めっちゃ失礼なことを平気で言うし、気の弱さがうかがえるし、ずっと一緒に過ごすパートナーとしてはどうなのかな…、でも、包み込むような大らかさと優しさが滲み出ていて、いい意味での人を巻き込む力もあって、それは、いまの彼女にとってすごく眩しく思えることなんじゃないだろうか、なんて勝手なことをいくつも考えながら鑑賞しました。
心に残った場面は沢山あるけれど、彼女が彼を呼ぶと、そんなに慌てるの?ってくらい彼がすごいスピードで走ってくる、といったコミカルな場面とか、大好きです。それまで流れていたオシャレ系BGMまでピタッと止まるんですよ。
この作品を観て何よりも強く思ったことは、コレに尽きます。
やっぱり、恋っていいよね。
おわりに
先月観た作品の、TOP5を挙げさせていただきました。
制作国は以下の通りでした。
『Ding Dong Ditch』 日本
『マーヴ』 アメリカ
『シスター』 ベルギー
『ロゴラマ』 フランス
『目はこっち』 イギリス
只今、夏真っ盛り。子供の通っている幼稚園も夏休みなので、少しのんびりできるかと思いきや、逆でした。
夏休みのほうが忙しい。
生活リズムがイレギュラーになるからなのでしょうか、普段行かない場所に遊びに行ったりするからなのでしょうか、なんだか毎日が慌ただしく、あっという間。
何をするにも時間が足りない感覚があり、ブログへの投稿もXへの投稿も、明らかに減っており、もっと何事も手際よくこなしていきたい、と思わされる夏の日々を過ごしています。
そんな中でも、空いた時間に短編小説を読んだり短編映画を観たりして楽しめているので、ありがたいことだなと感じています。
月々に鑑賞した短編映画TOP5に、今回は、初めてアニメーション映画が入りました。
アニメーション映画は、学生の頃にアートアニメに出会って以来、ずっと魅了されています。
これからも、アニメーションを含めて、様々なジャンルの作品を鑑賞していきたいと思っています。


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